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今だからこそ改めて考えたい、テレワーク導入のメリットとポイントを解説

前回の記事では、MJSが独自調査をした「バックオフィス業務に関する総合調査」レポートの解説を通じて、テレワークの実施状況と従業員満足度、デジタル化の関係について紹介しました。

ここのところコロナ感染拡大第11波には注意が必要ですが、コロナ禍が収束して以来、テレワークを実施・継続する企業と出社を義務付ける企業では求職者の間で評価が分かれると言われています。

特に中小企業では、人材採用と業務の効率化において、 テレワークをどう捉えるべきなのでしょうか。テレワークの現状や課題と考えられていること、そして導入時のポイントなどについて、 一般社団法人日本テレワーク協会の村田 瑞枝事務局長に伺いました。

村田 瑞枝(むらた・みずえ) 氏

一般社団法人日本テレワーク協会
事務局長


テレワークを希望する求職者とテレワーク実施状況にはギャップ

テレワークの導入には多くのメリットがあります。具体的には「人材の確保」「生産性・効率性の向上」「事業継続性の確保」「営業効率・顧客満足度の向上」「デジタル化の推進」「コスト削減」「企業のブランドイメージ向上」などが挙げられます。

その継続希望率は上昇傾向にあり、8割以上の求職者がテレワークを希望しています。しかし、希望者は増えているにもかかわらず、地方と小規模企業を中心に実施企業が減っているのが今の日本の現状です。

東京都産業労働局が公表したテレワーク実施率の推移

特にテレワークの継続を希望しているのは若者たちです。学校教育の現場でもオンライン授業のニーズがより高まっており、それに慣れた学生たちは将来、就職先としてテレワークができる会社を選択するようになると考えられます。

しかし、日本では依然として多様な働き方が認められていません。家庭の事情などで短時間勤務を希望する人材の求人倍率は0.3倍程度と、フルタイムの求人の6分の1ほどです。こうしたギャップをテレワークで埋めることができれば、地方においても人手を確保しやすくなるのではないでしょうか。

コミュニケーションの不安はITツールで解決

日本でテレワークが浸透しない理由としては、「コミュニケーション不足でメンタルが不調になる」「イノベーションに必要な創造的なコミュニケーションが取りづらい」「雑談ができないため社内コラボレーションがしにくい」といったものがあります。

こうして見ると、コミュニケーションに不安を感じている企業が多いことが分かります。

ですが、実際にはITツールを使いこなすことでそういった点はカバーすることができます。
例えば、コミュニケーションに不安を感じるのであれば、チャットツールを活用する方法があり、出退勤時の連絡や業務に関する質問、資料の提出とフィードバックなどを全てチャット内で完結できる仕組みを整え、コミュニケーション不足を解消していくことができます。

どうしても直接話して相談したいことがあれば、職場内で「今通話よろしいでしょうか」といった事前連絡抜きにビデオ通話ができるルールを設けるなど、コミュニケーションが取りやすい環境を整えるのも有効でしょう。
ある企業では、勤務時に部署のグループ通話を常時接続することで、メンバーの雑談や質問などに対応しやすくし、コミュニケーション不足を解消しています。

そのためにもまずは経営者がITツールへの抵抗を無くし、中高年の社員に積極的にチャットツールを使用するよう促すことが重要になります。

テレワーク導入に向けて有用なコミュニケーションツール一覧

中小企業がテレワークを導入するには

テレワークを導入する上で、企業規模の大小は問題ではありません。
肝心なのはITツールを活用できる環境をつくることです。

そのためにまずは各社員の業務の棚卸しを進めましょう。
属人化・ブラックボックス化してしまい、担当者でないと全容を把握できない業務はありませんか。業務効率化と今後の引き継ぎも見据えると、この作業は必須です。
各自の持つ顧客情報や作業工程などを細かく整理することで、どこにどんなITツールを差し込めば業務を効率化できるか、スムーズに業務を引き継げるかが見えてきます。

もう一つ欠かせないのがペーパーレス化です。
業務において紙ベースの作業、出社前提の業(承認・決裁、請求書発行、FAXの利用など)がある場合、まずはクラウドサービスなどを活用し、ペーパーレス化を進めなければなりません。
ある企業は紙文化が色濃く残る乱雑なオフィスだったそうで、社員のモチベーションの低下を問題視し、2012年頃から業務改革に取り組みました。ペーパーレス化の推進とともにテレワークによる働き方改革を進めたところ、残業が激減し、有給取得率が激増、女性社員数が3倍になるなど、ポジティブな変化が現れました。

しかし、この例に倣おうとただ闇雲にキャビネットの中の書類をスキャンし、サーバーへ格納しても、どこに何が入っているか分からなくなるといったことになりかねません。
それに備えて必ずフォルダ分けのルールを設けるなどしてください。より詳細なノウハウが必要な場合は専門家のサポートを検討してみるとよいかもしれません。

テレワークを推進する上での相談窓口

テレワークではサイバーセキュリティ対策も重要になります。
特にセキュリティ対策状況、データの不正な持ち出し、業務実施状況などをしっかりと把握し、人為的なミスを未然に防がなければなりません。パソコンのセキュリティ管理については、①ログ管理②電源管理③ソフトウェアのバージョン管理④セキュリティパッチの適用があります。

①についてはPCの操作、認証、通信履歴などを収集し管理することを意味し、従業員の勤務状況の管理などに役立ちます。

②は電源オプションを適切に設定することでシステム運用中に不要な機能をオフにして外部からの不正アクセスを予防、第三者による不正利用を事前に防ぐことができます。

③はバージョンアップとともにメーカーは旧バージョンへのサポートを終了することがあるため、サポートを受けられなくなるリスクを減らすには必要な作業です。

④は③と同様にベンダーが配布するセキュリティにおける脆弱性を補填する仕組みです。これらを徹底すれば、テレワークにおいてもセキュリティリスクをかなり軽減できるはずです。また、その際にはヒヤリハットを共有することも効果的です。

テレワークの本来の意味

最後に、当協会はテレワークに地方創生や働き方改革を実現する可能性があり、多様な働き方を受け入れることで、従業員のモチベーションやロイヤルティを高める効果があると考えています。

テレワークというと、多くの方は「自宅でのリモートワーク」をイメージされるかもしれません。ですが、テレワークとはそもそも「tele=離れたところで」と「work=働く」を組み合わせた造語であり、「情報通信技術(ICT)を活用した、場所と時間にとらわれない柔軟な働き方」のことを意味します。

ドローンを活用した農薬散布や、運送業におけるITを活用した点呼確認(による直行直帰)など、その可能性はまだまだ広がっているのです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

なお、このテーマのより詳しい内容は、MJSの会計事務所のお客様向け広報誌『税理士事務所CHANNEL』2024年6月号の特集にてご紹介しています。
ご興味を持った方は下記URLにアクセスしてください。
https://www.mirokukai.ne.jp/channel/genre/series/2406new-shape/

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