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インボイス制度の先にある消費税の将来像

当編集部が所属する広報チームが先日、「インボイス制度」をテーマとするメディア向けのプレスセミナーを開催しました。

今回はその内容をレポートします!


インボイス制度の長所と短所

講師は望月 文夫先生、税理士であり青山学院大学 大学院 特任教授の方です。また、当社のシンクタンク組織「MJS税経システム研究所」の客員研究員も務めていただいています。

講師の望月 文夫先生

インボイス制度は、正式名称を「適格請求書等保存方式」といい、2023年10月に施行された消費税の仕入税額控除の方式を指します。
売手側と買手側の双方がインボイス(適格請求書)を保存することで、取引における正確な消費税額と消費税率を把握し、適切な納税を促進することが期待されています。

日本ではようやく導入されたインボイス制度ですが、世界175の国では既に同制度が導入されているそうです。

財務省によると、2023年9月15日時点で課税事業者(約300万者)の約97%(約292万者)が申請し、免税事業者も111万者ほどが申請しているといいます。

出典:財務省資料
出典:財務省資料

望月先生はインボイス制度の長所と短所を次のように考えます。

【長所】
・課税取引に関する情報を示す(本体価格と消費税を別個に示す書面を取引当事者の間で流通させること)
・税務当局によるコントロールを可能とすること
・買手の仕入税額控除権の行使を可能にすること

【短所】
・納税者の事務負担が重くなること、など

(出典:西山由美「インボイス制度の実施とその将来像」ジュリ1588号, 15頁)

デジタルインボイスでコスト削減

インボイス制度の開始とセットで注目されているのが、「デジタルインボイス」です。
国税庁のウェブサイトによると、適格請求書は電磁的記録(電子データ)での提供も可能となっており、この電子データのことを通称「デジタルインボイス」と呼びます。

日本では、国内の事業者が共通的に利用できるデジタルインボイス・システムの構築と普及促進を目的とした「デジタルインボイス推進協議会(EIPA)」という団体があり、MJSは設立発起人・幹事法人の一社です。
デジタルインボイスの標準仕様の策定に携わりました。

このデジタルインボイス導入の長所には、例えば海外の先行事例として、紙の請求書をデジタルインボイスにしたところ、シンガポールでは時間と費用が45~92%、オーストラリアでは平均70%とそれぞれ減少したといいます!

望月先生も「時間や費用の削減効果は、得意先や仕入先の数によって異なるものの、費用対効果の面では極めて有益と思われる」と仰います。

なお、デジタル化が進むと、(租税回避を防止すべく)インボイス交付時に当局にも情報提供をする方法(Transaction Based Reporting:TBR)を採用する国もあります。
現在、OECD加盟の30か国以上でTBRが採用されているそうです。

消費税は将来どうなる?

次の概念図が示すように、政府は効率化のため業務のデジタル化を進めるとともに、事業者のデジタル化促進をも行っています。
諸外国ではデジタル化が進んでおり、日本でも年末調整の電子化を進めていった先に「記入済み申告書」を導入することを国税庁が発表しています。これが実現すると、個人の年末調整があらかじめ記載された情報が当局から送られてきて、内容に問題なければ「OK」など返信一つで完了するようになります。これは楽ですね!

※Peppolとは、デジタルインボイスの国際規格です

出典:国税庁資料

また、先ほどご紹介したEIPAにおいても、デジタルインボイス・システムの構築と普及を通じて、商取引全体のデジタル化と生産性向上に貢献することを目指しています。
再度申し上げます。MJSもその一員です。

EIPAでは次の図のような商取引の将来像を示しており、望月先生は「国税庁、デジタル庁、経済産業省などの行政機関は、この図が示すように、事業者に対して、受発注から請求、決済に至るすべての商取引について、デジタル化してほしいと考えている」と仰います。
現在は電話、FAX、メールで行われているやり取りがデジタルに置き換わるイメージです。

※全銀EDIとは、支払企業から受取企業に総合振込をする際にさまざまな情報を添付することで、資金決済事務を合理化するシステムです

デジタルインボイスを用いた商取引の将来像
出典:デジタルインボイス推進協議会ウェブサイト

そして最後に、望月先生は日本の消費税の将来像を次のように語りました。

「税収は歳出を賄うためという見地に立てば、消費税の税率引き上げ=悪とは必ずしもならない。本来どのような消費税制にすべきかを幅広く議論すべき」
「消費税の中身を吟味する必要があるのではないか。女性用生理用品に軽減税率を適用すべきと提起した日本人女性がいる。英国ではEU離脱を契機にゼロ税率に、フランスでは2016年に軽減税率(5.5%)に、それぞれ改正した」
「国民が関心を寄せるのがTBRだろう。韓国では、課税売上高2,000万円超の法人のみTBRが強制適用される。日本がTBRを導入するかは未知数だが、冷静な議論を踏まえた上で最適な制度構築を期待したい」

レポートは以上となります。

インボイス制度の導入を契機に、業務のデジタル化が一層進みそうですね。
MJSは情報処理支援機関(スマートSMEサポーター)認定企業として、労働生産性の向上を目的とした財務会計システムをはじめとする業務パッケージなどのITツールの提供ならびにそれらの導入を支援する「IT導入補助金」の申請サポートも行っています。
まずは相談ベースでも構いませんので、お気軽にお問い合わせください。
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最後までお読みいただきありがとうございました!