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構造的な賃上げ、国内投資の投資促進、子育て支援の実現なるか⁉ 令和6年度税制改正を税務のエキスパートが独自解説

毎年行われる税制改正。単年で見ても国の狙いが分かりますし、複数年で追うと一つひとつの施策にストーリー性があり、非常に興味深いです。

MJSの広報部門では、MJSのシンクタンクであるMJS税経システム研究所との共催で、年末に与党から発表される税制改正大綱のポイントを、メディアの方向けに提供する「プレスセミナー」を開催しています(税制改正に関してはプレスセミナー以外にも、会計事務所さま向けの認定研修を行っております)。
今回は、本年2月に開催した令和6年度税制改正に関するプレスセミナーのハイライトをお伝えします。
講師を務めていただいたのは、税務のエキスパート・植田 卓先生です。

植田 卓(うえだ・たかし)先生

【プロフィール】
大阪府出身。1981年に独立し、大阪市内で植田会計事務所を開業。法人や個人へのアドバイスを行う中、日本税理士会連合会常務理事調査研究部長等を歴任し、現在は立命館大学法学部客員教授、「MJS税経システム研究所」税務システム研究会の顧問を務める。


ポイント①:構造的な賃上げの実現

令和6年度税制改正のポイント一つ目は、「構造的な賃上げ」です。

与党大綱が示す基本的な方針では、「30年ぶりの高水準の賃上げ、過去最大の民間投資など、日本経済は明らかに動き始め、デフレ脱却・構造転換に向けた千載一遇のチャンスを逃さぬよう、この動きを止めることなく、より多くの方が享受できるようさらに拡げていく必要がある」とされています。

その一丁目一番地が、物価上昇を上回る賃金上昇の実現です。

この点について講師の植田先生は、「しかし実際の経済は、賃金上昇→消費拡大→投資拡大の好循環にはまだ至っておりません。そこで、デフレに後戻りさせないため、令和6年度の税制改正では、個人を対象に所得税・個人住民税の定額減税を実施し、企業に対しては賃金上昇額の一定割合について法人税額からの控除を認める賃上げ促進税制をさらに強化することで、好循環の実現につなげていこうとしています」と説明されました。

所得税・個人住民税の定額減税…納税者※および配偶者を含めた扶養家族1人につき、令和6年分の所得税3万円、個人住民税1万円の減税(特別控除)を行う
※合計所得金額1,805万円超の高額所得者は対象外

定額減税については、2024年6月以降の源泉徴収・特別徴収など、実務上できる限り速やかに実施することとなっています。
植田先生は、「給与所得者に対しては雇用者が源泉徴収を通じて定額減税を実施するが、その手順の複雑難解さに各企業は対応できるのか」「控除額以上の納税額がある者からは税額控除、納税額のない者へは給付、納税額が控除額に満たない者へは税額控除と給付の両方、の混在が実務上の混乱を招かないか」、この2点を懸念されていました。

その点、MJSの給与計算システムでは、定額減税も計算できるように機能を強化し対応しております。

賃上げ促進税制…給与等の支給額が増加した場合の税額控除制度に関する措置

出典:中小企業庁資料

賃上げ促進税制について植田先生は、「大企業向けの控除率は最大35%になり、従業員が2,000人以下の企業を新たに中堅企業として控除を受けやすくし、中小企業向けについては控除率が最大45%とされ、赤字の場合は5年間という前例のない期間にわたって繰越しが可能になりました」と解説し、その効果に注目されているそうです。

なお、引用した資料に記載の「くるみん」「えるぼし」とは、子育てと仕事の両立や女性の活躍推進に積極的な企業を厚生労働省が認定する制度の名称です。
https://jsite.mhlw.go.jp/fukuoka-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/koyou_kintou/hourei_seido/_120977.html

ポイント②:国内投資促進の更なる実現

令和6年度税制改正のポイント二つ目は、企業向けの新たな投資促進措置として、戦略分野国内生産促進税制イノベーションボックス税制が創設されたことです。

戦略分野国内生産促進税制に関して植田先生は、「特定の戦略分野について積極的な長期投資を支援するため、半導体など戦略分野に係る産業競争力基盤強化商品を指定し、これらの製造量に一定の単価を乗じた金額を法人税額から控除して、その軽減された法人税額を再投資に向けるための制度です」と解説されました。

出典:経済産業省「令和6年度(2024年度)経済産業関係 税制改正について」

一方、イノベーションボックス税制については、「企業が国内研究開発で得た特許権やAI分野のソフトウェアに係る著作権等の無形資産について、これらの譲渡や使用許諾等から生じる所得の一定額の控除を認める制度で、国際的にも遜色のないもの」と評価。

そして、「いずれも画期的といえる制度であり、その効果を見守る必要があります」と強調されました。

出典:経済産業省「令和6年度(2024年度)経済産業関係 税制改正について」

ポイント③:子育て支援の実現について

三つ目のポイントは、「子育て支援の実現」です。

与党大綱が示す基本的な方針では、「こどもを生み育てることを経済的理由であきらめない社会を実現するため、政府として次元の異なる少子化対策を進める中で、税制においても、子育て世帯を対象とした上乗せを行うなど、子育て支援措置を講ずる」とされています。

併せて、植田先生は次のような見解を示されました。
「子育て支援に対する税制の骨格は、『住宅支援税制の拡充』、『生命保険料控除の拡充』、『扶養控除の見直し』、『ひとり親控除の見直し』の4点からなりますが、これらは令和7年度の税制改正大綱において本格的に検討され、実施されます。ただし、子育て特例対象個人に対する住宅ローン控除の拡充等については、急激な住宅価格の上昇等の状況を踏まえ、令和6年限りの措置として先行的に実施されます」

本格的な支援措置は来年度以降になるものの、今年度限定の支援があるので、子育て世帯の方は活用したいですね。
借入限度額が上乗せされる住宅ローン控除の拡充のほか、一定の子育て対応改修工事が対象に加えられる住宅リフォーム税制(税額控除)の拡充もあります。

プレスセミナーのハイライトは以上です。
なお、MJSでは適用が間近に迫ってきた定額減税に関するセミナーを随時開催しています。
最新のセミナー情報は下記サイトをご覧ください。
https://www.mjs.co.jp/seminar/?i_prefectures=&i_area=&dt_date_start=&dt_date_end=&keyword=%E5%AE%9A%E9%A1%8D%E6%B8%9B%E7%A8%8E#result

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