あなたの課題にも共通する? 「中小企業の経理担当者の働き方&実務の困りごと実態調査」を紹介
以前の記事でご紹介しましたMJSのシンクタンクである「MJS税経システム研究所」が、「中小企業の経理担当者の働き方&実務の困りごと実態調査」を実施しました。
対象は企業の経理担当者362名で、目的は実務での課題や経理業務に関する情報収集の状況、スキルアップの取り組み等について知るためです。
今回は、この実態調査の中でも特筆すべきポイントをまとめてお送りします。
最多の「困りごと」は、効率化への工夫で解決が望める
本調査は、数々の企業の経理業務の代行や業務改善コンサルティングを手がける株式会社トラフィックエイジア代表取締役でMJS税経システム研究所の客員講師でもある外波 達也氏監修のもと、企業で働く全国の経理担当者のリアルな声を明らかにするために実施しました。
調査結果は前編と後編に分けて公表しました。
まずは前編のサマリーをお届けします。
【回答者のプロフィール】
・勤め先の企業の上場状況は、非上場会社ほか(公益法人などを含む)が83.7%
・年商20億未満の企業に勤める人が全体の53.2%
・従業員数100名未満の企業に勤める人が55.0%
・従業員数が99人以下の企業では経理担当者の人数は1人または2~3人、従業員数が100名以上の企業では経理担当者2名以上が大多数(図1参照)
※SA=単一回答、MA=複数回答、OA=自由記述回答
実際に従事している業務について伺いました。
最も多かったのが「伝票の作成・帳簿の記入・仕訳入力」で、役職問わず選択されています。回答者のうち約10%は経営者・役員クラスの方でした。
「月次決算書の作成」は全体の53.6%と、半数以上の企業においてタイムリーな経営情報が求められることも分かります。
それでは普段の業務での困りごとについて伺った回答結果をご紹介します。
<有識者考察>
多くの人が困りごととして挙げている「1.伝票の作成・帳簿の記入・仕訳入力」「4.従業員の経費精算」「7.給与計算」のように、発生頻度や件数が多く、労務管理や所得税など複雑な知識が必要で、かつ期日厳守の業務において、根強く課題があるようです。正確性と迅速性が求められ、効率化への工夫で課題解決が望める業務です。
さらに、「22.法制度改正への対応」が24.9%と目立ちます。これは、近年、特にインボイス制度や電子帳簿保存法への対応、令和6年所得税・個人住民税の定額減税などによって経理担当者への負担が増えたことが背景にあります。
注目したいのは、「14.経営分析」「15.予算編成」「20.原価計算」「21.管理会計」がいずれも8~9%ほど挙がったことです。中小企業は、事業を行った後の法人税などの計算のための税務会計が主だといわれていますが、ここに挙がったものは、いずれも未来志向の管理会計の要素です。これからは、経営分析や予算実績管理、原価計算による適切な価格設定をするなど、データに基づいて着実な経営を行うという意識の表れでしょう。
今後身につけたいスキルの最多は「税法知識」
続いて後編となる「働く悩みとスキルアップ編」をご紹介します。
まずは働く上で悩みを感じていることをお聞きしました。
<有識者考察>
全体として最も多く挙がったのは、「業務の属人化」で、回答者全体のうち半数の人が選択しています。経理担当者の人数別の区分を問わず多数挙げられています。業務の属人化の悩みは、企業の規模を問わず、多くの経理担当者に共通する悩みであることが、明らかになりました。
次いで、「業務の煩雑さ」が挙げられました。回答者全体のうち43.1%、経理担当者の人数別では、すべての区分で各区分の3人に1人以上が選択しています。経理担当者の人数や年商が多くなるにつれて、「業務の煩雑さ」を選択する人の割合は多くなりました。
3番目に多かったのは「業務量の多さ」です。回答者全体のうち32.0%が選択しています。経理担当者の年商別では、10億円以上20億円未満が46.3%で最多でした。この区分には、成長企業もあると考えられます。成長企業では、業績に波があり、期ごとに新たな業務が発生する場合などが、業務量の多さにつながる一因と考えられます。
続いて、スキルアップの現状についての回答結果です。
<有識者考察>
スキルアップのための費用負担について、「自身で費用を出す」が37.0%で最多となりました。スキルアップのための時間は、「業務時間外に時間をとる」が50.6%で過半数を占めました。
グラフには示していませんが、企業規模別(従業員数・年商)に見ても同様の割合でした。見えてくる仮説は「自分個人のスキルとして身につけよう」という意欲です。スキルの個人差が生まれやすく、業務の属人化と関連しそうです。
情報収集の手段は、「インターネットを検索する」が77.3%で最多でした。「顧問税理士・公認会計士に聞く」も56.4%と目立ちました。税理士と良好な関係を築くためにも、適切に質問する力が必要です。
最後に、今後身につけたいスキルについて伺いました。
<有識者考察>
今後身につけたいスキルについて、最も多く選択されたのは、「税法知識」で46.1%でした。中小企業において、税務申告は顧問税理士に依頼するとしても、企業の財務全体を考えると、税法まで知っておくことが今の経理担当者には求められています。
例えば、キャッシュフロー管理には納税額の計算が必要ですし、利益や純資産の予測をするにも税の理解が必要です。
また、今回のアンケートでは調査していませんが、事業承継の際にも、株価算定などで税法知識が必要になります。そのほか、会計知識やITスキル、分析力が多く挙がりました。今後の企業経営に特に必要とされる職務能力と言えます。
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最後までお読みいただきありがとうございました。
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